石原さとみさん主演の「密やかな結晶」を観てきました。この作品を観る前に原作を読んだのだけど、演劇を見ることを前提で読んでいたので、このセリフはこんな風に語られるのかなとか、いろいろ想像していて、まさにそれが実現されたような作品でした。石原さとみさんは、テレビのインタビューの中で舞台の素晴らしさについて「稽古ができること。恥を掛けて、ダメだしされて、演出家の方や共演者と語り合って、熟成させて完成させたものが披露できるということ」というようなことを述べていたと思うけど、そういうことなのかな。それぞれの人が受け止めた解釈と、伝えたいことをぶつけ合って、一つの作品にする。ドラマも映画も同じだと思うけど、繰り返し繰り返し演じて、修正して、形にする。その繰り返しが多いことと、観客の反応を生で受け取れるところが演じる側の満足なのかもしれない。
この作品のモチーフは消滅。何もかもが無くなってしまう島で、人間が最後まで失いたくないものは・・・一つは記憶。そして、自分が確かに存在したという証、なのかな。原作者の小川洋子さんは記憶というものに凄く執着しているような気がしていて、「博士の愛した数式」でもそうだったのだけど記憶を失ってしまう人とのつながりが作品のテーマになっていたりする。記憶が消えてしまうと、人間とのつながりも消えてしまい、愛も失われてしまう・・・なのかな。
石原さとみさんははじける笑顔が素敵な人ですが、エンディングを含めてそういう笑顔が見られなかったのは少し残念。声も枯れていたし、少し疲れているのかもしれないですね。でも良かった。好きな女優が熱演しているのを生で見られるのは最高に幸せ。