りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

湖の女たち

吉田修一さんの「湖の女たち」を読みました。「悪人」や「怒り」を読んだ時ほどの何とも言えない心の衝撃はなかったけれど、さすがに映画化されるだけあって、考えさせられる作品。

薬害問題と介護施設の不審死。それを追いかけて行った先に旧満州731部隊があり、そこに物語の謎を解く鍵があるわけだけど、731部隊が出てくるなら、もう少し731部隊の歴史に残した意味を伝えてほしかったような気がする。大人たちが繰り広げる人体実験の波紋は子供たちに伝播する。ひとつは湖畔の全裸の少年少女の死であり、もう一つはこの物語のキーとなる事件。キーワードはマルタ。人間を人間と思わなくなったときに人はどこまでも残虐になれるということなのかな。それとも相手を何らかの形で完全に支配できる立場になったとき、その命を奪うことにすら鈍感になれるのか。何にせよ、人間が本来持っていて、何かをきっかけに残酷になれるとしたら、その代償はあまりにも大きいような気がする。