りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

マチネの終わりに

 平野啓一郎という作家には随分前から注目をしていたのだけれど、作品を読んだのは初めて。そして、ちょっとした衝撃を受けました。来年映画が公開されるという「マチネの終わりに」の原作、大人の恋愛小説といってしまえばそれまでなのだけど、その文章というか表現力は今まで読んできた小説というものとは一線を画すような美しさというかプロフェッショナリズムを感じた。主人公の一人である小峰洋子は美人で知性と教養のあるジャーナリスト。映画監督を父に持つことの影響か芸術への理解も深い。故に天才ギタリスト蒔野聡史の音楽を理解し、それを表現する力を持っている。そうした二人が惹かれあうのは必然だったのかもしれないが、運命の悪戯というのか、すれ違いとある種の嫉妬心が歯車を狂わせてしまう。結ばれなかった二人にはそれぞれの幸せの形があり、そうした経験を経たからこそ得たものもあっただろう。洋子の短い結婚生活にピリオドを打つ際のリチャードの言葉はある意味本当。いつも冷静に正義とジャーナリズムを家庭に持ち込まれると、時にそれは冷たさを感じさせる。そうした感覚は蒔野が新しい芸術にたどり着いた時には、それを正しく理解し、感動を表現に変えてくれるのだろうけど、そこにたどり着く泥沼の過程では違うものが求められていたのかもしれない。ただ、切ないですね。ラストをどう理解したら良いのか。理性をもって理解することはできても気持ちがついていかないようなそんな感情を持ちました。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

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