瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」を読みました。先日映画鑑賞した作品。映画は映画として良かったのだけど、恋人ではない若い男女がお互いの病気を知ることから、お互いを気遣い、思いやる関係になっていくところがちょっとしっくり来なくて、原作に手を伸ばした次第。映画は時間の制限もあるし、少し面白みを持たせたいということで、ずいぶん原作と違った設定になっているのだなと思いつつ、大切なプロットは外していないなと思いました。ただ、原作はそれぞれお互いの視点で語られているところもあって、それぞれの視点でお互いが何を意識し、何をどう感じ、自分がどう変わっていくかというのを描写しているので、二人の位置関係・距離感が判りやすく、個人的には原作の方が良かったなというのが正直な感想。どんな病気もそうかもしれないけど、ある日突然告知を受けて、それまでの人生とは異なる人生を歩まなければならないことになる。余命の告知はもちろん辛いと思うけど、どうにもならない自分とこれから何年続くか判らない人生を歩んでいかなければならないというのは、それはそれで余命とは異なる絶望感があるのだろうなと思ったりした。ただ、最初の絶望から何年かかけて自分を冷静に見られるようになった時、自分の周りに自分を見ていてくれる優しい人たちがいて、恋愛とは違った感情で思ってくれる人、思いやれる人もいて、新しい形の幸せ感と前向きになっていく自分を見つけられたのは良かったような気がする。確かに、夜が明けそうな気がする。これまでのあがきが夜明け前だったんですね。何となくタイトルもしっくりきました。