りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

ドクター・デスの遺産

中山七里さんの「ドクター・デスの遺言」を読みました。刑事犬養隼人シリーズの第4弾らしいけど、いわゆる推理小説とは少し違いました。テーマは安楽死。ドクター・デスは安楽死を希望する人に安らかな最期を与えることに信念を持っている。法律的には殺人に当たることは重々承知した上で、苦しみ続ける本人と家族のために安楽死という「死ぬ権利」を与えようとするもの。当然、刑事の倫理観とは合わない。ただ、普通の推理小説とは違うというのは、この安楽死問題に割と正面から取り組んでいることだ。キリスト教文化圏では、死はあくまでも「個人の死」であると考えられ、教義で自殺を禁じる一方、無意味な治療で本人を苦しませるのは形を変えた虐待や拷問に過ぎない」との認識もある。だから欧州では少しずつ尊厳死というものが法律的にも認められる方向にある。日本の場合は、臨床医師は患者の救命と延命が至上命令であり、己が持てる医療技術の全てを延命治療に注いでいる。それこそが医療の大義という意見がある一方、終末期を定義するガイドライン自体に規定がなく、延命治療を停止する行為は法的責任を問われる。医師が終末期医療を回避したがるのはやむを得ない事情がある。また社会的には、日本は「個人の死」というよりはむしろ、「他人に迷惑をかけないための死」に逃れる危険性を孕んでいる可能性があり、日本人が安楽死をしたいと言えば、それは必ずしも本人の意思によるものではなく、周囲の空気を読んでの意思表示になりかねないという問題点も指摘されている。ということで、単なる推理小説としてではなく安楽死問題を考えるきっかけになりました。ただ、推理小説としても最後のちょっとしたどんでん返しはなかなか面白かったです。

ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 (角川文庫)

ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 (角川文庫)

  • 作者:中山 七里
  • 発売日: 2019/02/23
  • メディア: 文庫
 

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