りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

真実の10メートル手前

 米沢穂信さんの「真実の10メートル手前」を読みました。「王とサーカス」の主人公でもある大刀洗万智さんが主人公の短編集。「王とサーカス」で万智さんは新聞記者を辞めて、フリーになった最初の仕事にカトマンズで遭遇するわけだけど、この「真実の10メートル手前」は新聞記者時代の話とフリーの話が混じっている。両者の違いは、組織で働くか、個人のプロフェッショナルとして働くかなのだけど、記事をどういう媒体に載せるか(新聞=速報性重視、月刊誌=記者の視点重視)という違いがあり、特に月刊誌というのは速報性で劣る分、記者が独自の視点・解釈で事件や事故を捉えるところで、万智さんの鋭い洞察が活きてくるというスタイルなんでしょうか。6つの短編はどれも面白かったのだけど、「恋累心中」と「ナイフを失われた思い出の中に」の2つは犯人を追い詰める謎解きの話でもあり、推理小説として、「なるほど」と思われる面白さがありました。特に「ナイフを失われた思い出の中に」は被疑者の独白文から、真実を読み取った凄さと(まあ、小説なんで当たり前だけど)、記者は何を伝えるべきかという「王とサーカス」でも提示されたメディアの役割を問うようなところが強く出ていて、強いメッセージ性を感じました。もう少し、一連の作品を読んでみたいと思わせる作品でした。

・真実の一〇メートル手前
・正義漢
・恋累心中
・名を刻む死
・ナイフを失われた思い出の中に
・綱渡りの成功例

真実の10メートル手前 (創元推理文庫)
 

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