りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

人工超知能

 井上智洋さんの「人工超知能」を読みました。この本2017年7月に出版された本ですが、もっと前に読んでおけばよかった。AIの概要を知るにはとても良い本。あとはあまり消化できていないのだけど、知能というのを考えるのにはとても良かった。全体の構成がしっかりしているのと、各章の扉にその章のサマリーというか論点がまとめてある。大学の先生らしいスッキリとしたまとめ方。それにとても広い範囲で扱っているけどそれなりの深さまで言及されているような気がする。雑誌や入門書では物足りない部分をしっかり補ってくれている内容。もう一歩進めるとかなり専門的な領域まで入るような気がする。全体の構成は第1章AIは未来をどう変えるか?、第2章AIの歴史をたどり、AIの正体を明らかにする、第3章機械学習ディープラーニング:人間の直感を再現できるか?、第4章汎用AI:人間レベルのAIは実現可能か?、第5章AIは人間の知性を超えられるか?、第6章ターミネーターは現実化するか?、第7章AIに知識は宿るか?とう流れ。自分のマーキングを見てみると、1章、2章は導入部だったせいかハイライトはほとんどない。第3章からハイライト個所があり、この第3章は機械学習を直感的に理解するのには有用性を感じた。教師あり学習教師なし学習は多変量解析の予測モデルと記述モデルの違いというような理解を今までしていたけど、それは概ね合っているようでした。ただ、機械学習を多変量解析の一種と考えるとイメージがついてこない。拡張です。ここから先は、本を読んで自分でイメージしたことなので正しいかはわからない。まず、ディープラーニングの多層構造をしっかりとらえきれていなかったのだけど、これって、ある意味交互作用なんだなと思うと少し理解がすすむ。記述モデルの代表モデルである主成分分析の各主成分は数学的に直交しているので、あくまで主成分という特徴量は独立。n次元ということでいくら拡張しても特徴量間の交互作用は表現できない。単純な線形モデル。ただ、多層にすることで特徴量×特徴量で新しい特徴量を作り出しているので新しい特徴量は交互作用項に当たる。しかもモデルの構造上多因子交互作用になっているのでより複雑な特徴量を抽出できるということかな。じゃあ、そういうモデルの構造が持てるようになった時に、重要なのは重みづけ。で、先生は「強化学習」が重要だと言っている。まあ、誤解を恐れずに言えば強化学習のポイントはデータの数。この本では報酬系のモデル化といっていたけど、結局、どういう判断をしていくと報酬が得られるかという成功確率を最大化していくので、試行回数と成功体験が多いほど精度は上がる。こういうモデルへの気づきを与えてくれただけでこの本の3章の価値は十分にあった。第4章は人間の知的能力を考える。キーワードは汎用性と自律性かな。それと脳の知的能力を実現するアプローチ方法。全脳エミュレーションと全脳アーキテクチャというアプローチがあるらしい。前者はイメージコピー、後者は部分部分をリバースエンジニアリングして全脳に展開したものと理解した。後者のアプローチの方がイメージしやすいし、実際にやるイメージも持てるけどいずれにしても大変そう。それに部分再現の合成が全体再現になるのかという疑問も残る。やはりそこには統合の枠組みの問題というのが残るらしい。第5章では知性を考える。ゲーデル不完全性定理が出てくる。否定的な自己言及は不可能であること。新約聖書の「エピメデニスのパラドックス」が判り易い。「クレタ人は嘘つきであるとクレタ人のエピメデニスは言った」というもの。人間なら、この文章も適当に理解できるけど、確かにコンピュータはこの矛盾を吸収できないかもしれない。そしてこの章では先生の造語であるらしい「メタ思考力」という言葉が出てくる。これは「思考について思考する能力」らしい。AIが人間のように思考するにはこのメタ思考力が必要ということ。AIは人間が作った。故に人間はAIよりメタな位置づけにある。よりメタな位置づけにないと人間の知性は越えられないという議論。つまり将棋で勝てるようになっても、囲碁で勝てるようになっても総合的な知性では人間にかなわないということかな。

残りの二章はより難しかった。人間が賢くなることと意識を持つことの違い。これは前に読んだ哲学を教えたらと同じような問い。やっぱりトロッコ問題が出てきた。考えなければならない問題だけど、自分の中では答えは出ていない。結局、結びにあるように人間の脳と心の問題が解明しなければ、人間を超えられるかという議論はできないということなのでしょう。感情や欲望には機能面と現象面があって、いずれも機能面ではAIはどんどん人間に近づいているようだ。それでも、渇望感のようなクオリアはAIに持たせることはできないという。この辺は自分の理解がもう一歩進まないと消化できない。

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