りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

がん 生と死の謎に挑む

 立花隆さんとNHKスペシャル取材班の「がん 生と死の謎に挑む」を読みました。全体は2部構成。前半はNHKスペシャルの番組を書いたもの。「がん」という病気がどういうもので、どのように生成し、どう付き合っていくのかということなのだけど、思っていた以上に「がん」という病気は判っていなくて、最近は早期に発見すれば治る病気なのだと思っていたけど、治るという表現は正しくなくて、「うまく付き合っていく」ということしかできないんだということが良くわかりました。あと、一人一人のがんはそれぞれに違うものであること、抗がん剤は思った以上に危険なものであり、かなり納得してからやった方が良いことなどが新たな知見。

後半は立花隆その人が、実際に膀胱がんになって手術した時の話で、医者にとってこういう患者は本当に「面倒くさい患者」に違いないのだろうけど、やっぱり凄いルポになっているなと思いました。徹夜明けでトイレに行ったら、血尿が出た。ああいう生活をしていたら、絶対にそうだろうけど人間ドックでいろいろ出ていたので、かかりつけの先生に電話したら、救急で来いとのこと。行ったらすぐに内視鏡で見られ、その場でがんを告知。手術の日程を決められて・・・1日の間でこれだけのことが起こったというところから、手術前日に入院、当日の朝から手術室まで、麻酔のこと、手術中のこと(下半身麻酔だったので意識が覚醒・・・医者にとっては嫌だっただろうな)、術後。そして経過観察の話。がんのように死というものを考えざるを得ない病気になると、一般的には1)驚きがあって、2)次に怒り(何で自分がそんな病気になるのか?)があって、3)死への恐怖があって、4)すべてを受け入れる(受容)と感謝、みたいな過程があるわけらしいけど、この人の場合はすべてが客観的。そして、それを番組にして、本にもしてしまおうというところが凄すぎる。まあ、本当の凄さは番組や本にするにあたって、情報を集め、理解し、それを整理して説明することなんだと思うけど。レジデントマニュアルを読んで、例えばがんの告知は患者のこういった点をケアしながら、こういう場合はこんな風に説明する・・・などという一般論を述べたうえで、自分の場合について説明。まあ、病理的にがんがどういうものかだけでなく、例えば患者のメンタルがどうとか、そういうところを含めて総合的に解説っていうところが、とにかく凄いなと思いました。

で、この本の中に松田優作さんの話が出てきます。彼の膀胱がんとの壮絶な闘い、そして死。この闘いの最中に遺作となった「ブラックレイン」があったということ。本当に今でも覚えているけど、ブラックレインの主役はマイケル・ダグラスであり、高倉健さんなのだけど、映画の中では完全に松田優作さんの「いっちゃった感」が凄くて、彼しか印象に残っていない映画あったこと。そして、映画を見て割とすぐに彼の訃報に触れて、その裏にこんな事実があったなんて、本当にびっくりしました。末期がんで余命宣告をされ、緩和ケアも受けず、時には排尿時の激痛でトイレで気絶するようなことがあっても、「この映画に出たいので、クランクアップまで生かしてください」ってそれが役者魂なのかな?その凄さは存分にあの作品に表現されていたと思います。

この本で、しばらく勉強に専念しようと思ったのに、これを読んだらもっと本が読みたくなった。まずいです。

がん 生と死の謎に挑む (文春文庫)

がん 生と死の謎に挑む (文春文庫)

 

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