高橋祥子さんの「生命科学的思考」を読みました。実はこの本も机の上に積読されていたのだけど、やっと開いてみた。
まず、生命原則なのだけど、一言でいうと「個体として生き残ることが最優先。それが担保されてくると次に種が繁栄するために行動する」というもの。非常に納得感がある。この生命原則は個体を取り巻く外界の環境が常に変化することを前提に作られていて、「多様性」は生命が命をかけて創り出してきた生命最大の特徴ということらしい。
ここからは少し難しいのだけど、人が努力をしなければならないのは、個体にとっての平衡と外界の環境にとっての平衡状態が異なるかららしい。外界の環境は常に変化するからこれに合わせながら生命を維持するためには、常にエネルギーを摂取し、代謝するという努力がひつようで、個体のエネルギーは有限であるため、そのエネルギーをどこに投入するか意思を持って決め、思考する環境に身を置く必要があるということらしい。で、多様性が重要という話に戻るのだけど、多様性とは単にバラバラのものが個々に存在する相対主義とは異なっていて、多様性の本質とは「同質性」の土台を前提とした差異の存在であるという。例えば、企業でいえば、てんでバラバラに人を集めるのではなく、企業理念のようなものは共通で受け入れる同質性を持った中で、色々な考え方があっていいというような理解みたいだ。あと、「バイアスとバライアンスのジレンマ」という言葉が出てきた。主観的な要素が多いほどバイアスによるエラーが多くなるが、客観的な要素が多くなると今度はバライアンスによるエラーが多くなるというもの。バイアスによるエラーは判り易い。直感だけに頼っては失敗するからしっかり客観的な情報を集める必要があるというもの。一方で、バライアンスによるエラーというのは、予測のばらつきと書いてあったけど、実は環境の変化ではないかと思う。統計的な予測を考えると判り易いけど、多変量解析でも実験計画法でも、予測は常に環境が同一であることが前提条件になっている。ただ、環境は常に変化するから、どんな精緻なモデルを作っても、当たらない時は当たらない。というか、いずれ当たらなくなる。なので、そこは直感も大事だし、ある意味信念のようなものも大事ということじゃないかな。最後にゲノム編集の話がでてきたけど、これはちょっと。ここは主観的に神様への冒涜のような気がするので触れないことに。
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