りおパパの日記

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資本主義の正体 マルクスで読み解くグローバル経済の歴史

池田信夫さんの「資本主義の正体 マルクスで読み解くグローバル経済の歴史」を読みました。いや本当に勉強になりました。
・労働力が不足し、労働節約的イノベーションが発達したことが、産業革命のきっかけとなった。
・所得と消費が増えると市場は拡大し、生産性が上がるが、資本の制約で収穫逓減の罠に陥る。
・資本主義は平和的に生まれたものではなく、植民地で蓄積された資本が生み出したものだった。
産業革命は、豊富な資本を使って労働力を有効利用する資本集約的な技術革新だった。
・西洋の産業化の原動力になったのは軍事革命だった。
・イギリスが帝国主義戦争で勝ち残った最大の原因は、租税ベースの拡大と国債によって国力をはるかに上回る軍事費を調達したことだった。
・技術革新が可能となるためには、巨額の資本とそれを使ってリスクを取る投資家が必要なのだ。
・規模の経済(収穫逓増)は資本設備が一定の規模を超えないと出ないので、そういう限界を超えるビッグ・プッシュが必要である。
古代ローマから大英帝国に至るまで、植民地をすべて直接支配した帝国は少ない。統治にはコストがかかり、あまり強権的な統治をおこなうと反乱がおこるので、名目的には属領の自治を認め、税を納めれば干渉しないのが普通。
マルクスの思想を「社会主義」ととらえて「資本主義」と対立するものと考えるのは誤りである。彼の思想はアソシエーショニズムであり、これは市場経済共存できる。
・組合で生産するには果てしない人間関係の調整が必要になり、タコツボ化した組織の合意で意思決定を行うと部分最適にはまり込んでしまう。
・利潤も損失も含むリスクという概念を理解できなかったことがマルクスの限界だった。
・日本企業は(中略)そこで重要なのは会社という共同体の維持であり、そのために奉仕する正社員なのだ。これは百姓を中心とする村落共同体から受け継がれたガバナンスであり、資本主義の原則としてのオーナーシップ(所有権)に対して、メンバーシップ(会員権)におるコントロールということもできる。
・全員一致でしか投資できないと、誰かが存するような投資はできず、企業行動が過度に保守的になるからだ。アソシエーションでは資本蓄積ができないだけでなく、資本家が決めて労働者に命令する資本主義のメリットがなくなり「決められない組織」になってしまうのだ。
・アソシエーションは、人々が現状を維持して暮らすには向いているが、戦争には弱い。(中略)戦争に勝つには権力や軍備を独裁者に集中する国家が必要であり市場で勝つには資本家に権力を集中する資本主義が一番なのだ。
・日本の企業は民主的に経営して労働者のモチベーションを高めてきたが、そのコンセンサスの強さが足枷となって「決められない会社」になり、グローバルな戦争から脱落し始めている。
・先進国が新興国に対して優位性を持つのは変革スピードが速い知識集約型の産業だから、独裁的な個人資本主義が適している。
・新陳代謝の不足が無能な経営者と非効率な企業を温存し、日本経済の活性化を阻んでいる。
・巨額の固定資本が必要でリスクの大きい現代の資本主義では、リスクを負ったものがリターンも損失もすべてとる資本主義が合理的なのだ。労働生産性以外の部分を資本家がとると、外部性の利益が資本家に帰着し、格差が拡大する。
・既存の技術の中で西洋をまねて成長するパターンでは、資本築盛の収穫逓減が起こった段階で限界がくる。
・G型産業は世界で一つの「オリンピック」なので、貿易・資本自由化ぐらいしか政府ができることはないが、L型産業の集約化や効率化のために地方自治体がやるべきことが多い。

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