野中先生ほかの「失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇」を読みました。さすがです。もともとの「失敗の本質」は20年以上も前に読みました。近代史に興味を持つきっかけになった本といっても過言ではありません。この本は、昨年HBRに掲載された論文が本になったものですが、読み応えがあり、非常に勉強になる本です。実は夏休みに読んでいたのですが、ノートしてからと思って忘れていました。今日、たまたま朝積んであった本が崩れたのでこの本を再発見し、あらためて移動中に読み返してみました。この本のモチーフは野中先生の前書きに端的に書かれています。
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日本軍の過去の失敗を例に、現在の組織に有益な教訓を引き出したのが「失敗の本質」だとしたら、日本軍の指導者の失敗と(数少ない)成功を題材に、現在のリーダーや組織にとっての有益な教訓を引き出したのが本書である。
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ですね。で、組織的失敗の要因についても、東日本大震災の際の原発事故を例に出して3点整理されています。1)イデオロギーに縛られ、現実を直視できず、国家の安全保障という大局的な見地に基づく現場対応もできなかった。2)開かれた多様性を排除し、同質性の高いメンバーで独善的に意思決定する内向きな組織であった。3)多様性の高いタスクフォースと官僚制を活かすために必要な統合・統制能力が欠如していた。
ということです。とても良い本なので目次を転記しておきます。
Ⅰリーダーシップの本質
第1章 戦場のリーダーシップ 求められる「現場感覚」「大局観」「判断力」
第2章 リーダーは実践し、賢慮し、垂範せよ 名将と愚将に学ぶトップの本質
Ⅱ組織とリーダーシップ
第3章 失敗の連鎖 なぜ帝国海軍は過ちを繰り返したのか 「攻撃は最大の防御」という錯誤
第4章 プロフェッショナリズムの暴走 昭和期陸軍の病理
第5章 「総合力研究所」とは何だったのか 総合国策の研究と次世代リーダーの養成
第6章 「最前線」指揮官の条件 日米比較:名もなき兵士たちの分析研究
Ⅲリーダー像の研究
第7章 石原莞爾 官僚型リーダーに葬り去られた不遇 組織人になれなかった天才参謀の蹉跌
第8章 辻政信 優秀なれど制御能わざる人材の弊害 独断専行はなぜとめられなかったのか
第9章 山口多聞 理性と情熱のリーダーシップ 危機に積極策を取る指揮官
Ⅳ戦史の教訓
第10章 情報敗戦 本当に「欧州ノ天地ハ複雑怪奇」だったのか ノモンハン事件「失敗の教訓」
第11章 合理的に失敗する組織 戦艦大和特攻作戦で再現する
第12章 派閥の組織行動論 昭和期陸軍 皇道派と統制派の確執に見る
最後に、尊敬する石原莞爾の東京裁判での言葉を記しておきます。「東條と意見の対立があったのではないか」と聞かれ、石原は「私には思想も意見もあるが、東條にはそれがない。意見のない人間とは対立しようがない」と言い放ったという。さすがです。
あと、第8章の辻政信に関する分析は秀逸。自分の辻に対する考え方が随分変わりました。NHKの土曜ドラマの「負けて、勝つ」、来週は辻の上司にあたる、服部卓四郎登場です。期待しちゃいます。
- 作者: 野中郁次郎
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 単行本
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