りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

世界で最もイノベーティブな組織の作り方

 山口周さんの「世界で最もイノベーティブな組織の作り方」を読みました。これ、あとがきにも書かれていましたが、間違いなく組織論の話です。

・本当の多様性とは:重要なのは、人と異なる考え方/感じ方をどれだけ組織成員ができるか、そして考えたこと/感じたことをどれだけオープンに話せるかという問題です。また、イノベーティブとされる企業であればあるほど、上下間での情報流通が活発に行われているという結果が出ています。

・ホフステードの四次元:ホフステードは文化的差異に着眼するにあたって、「権力の格差」「個人主義集団主義」「男性らしさ対女性らしさ」「不確実性の回避」という四つの「次元」を定義。権力格差の大きい日本のような国では、人々の間に不平等があることはむしろ望ましいと考えられており、権力弱者が支配者に依存する傾向が強く、中央集権化が進むと指摘しています。

・われわれ日本人は、「権威」と「リーダーシップ」を一体のものとして認識してしまうという奇妙な性癖を持っています。しかし、リーダーシップは本来、権威によって生まれるものではありません。それは責任意識によって生まれるものです。

・部下に意見を促し、それに対して真摯に耳を傾けるリーダー、つまり「聞き耳のリーダーシップ」を発揮している程度は、組織成員のモチベーションやコミットメントと強い相関があることを把握しています。

・機能認識の固着:一度「用途」を規定してしまうと、なかなか人はその認識から自由になれない

・報酬を与えることによって、創造的に問題を解決する能力は向上するどころか、むしろ低下してしまうということです。特に「予告された報酬」は、人間の創造的な問題解決能力を著しく毀損することがわかっています。質の高いものを生み出すためにできるだけ努力しようということではなく、最も少ない努力で最も多くの報酬を得られるために何でもやるようになるわけです。加えて、選択の余地が与えられれば、そのタスクを遂行することで自分のスキルや知識を高められる課題ではなく、最も報酬が多くもらえる課題を選ぶようになります。

・本当に大事なのは表面的な「仕組み」を盲目的にコピーすることではなく、人の行動が変わるようなメカニズムを、就業ルールやオフィス環境といった組織のハード要因と、リーダーシップやコンピテンシーといった組織のソフト要因に絡めて形成できるかどうかという点なのです。

・任務と能力の関係はそのような単純なものではなく、能力の背後にある「動機」が大きく職務のパフォーマンスに影響を与えること、動機のプロファイルによって、活躍できる仕事の種類(課題優先型か好奇心駆動型かなど)は変わるのだということを示しています。  

・経営においては「合理的な解は、そもそも合理的な解になり得ない」というパラドックスを持っているということをよく再確認しておいたほうがいいでしょう。合理的というのは論理的に正しいということですが、論理的に正しいことを追い求めれば解は必ず他者と同じになり、しかもスピードは遅くなります。ところが戦略というのは本質的に差別化とスピードを求めますから、ここには二重のパラドックスが発生することになります

・組織が行う意思決定のクオリティは、必ずしもリーダーやその構成員の思考力やリテラシーに左右されない。むしろ、その組織がどういうメンバーで構成され、どういう前提でもって議論を行い、どのようなプロセスで議論を進めるか――要するに「決め方」によって左右されるのだということを、この二つの事例は示唆しています。

・リーダーは「ルールでは判断できない、論理だけでは整理できない例外事項について意思決定する」ために存在しているのです。

コンドルセ陪審定理:市民革命を経たのち、合理的で健全な市民が民主的なシステムに則って行う意思決定は、王権に基づく権威によるそれよりも優れているという命題の数学的根拠を求めていました

・リーダーシップの本質の一面は「移動」にあり、その必然的結果としてリーダーは常に「行き先」を示すことが求められるということです。そして、ビジョンに求められる最も重要なポイント――それは「共感できる」ということです。

・イノベーティブな人材を集め、彼らを動機付けするためには、インセンティブやボーナスなどの報酬システムに工夫を重ねるよりも、挑戦的でやりがいのあるビジョンを与え、思いきりその実現を追求できる環境を与えてやることが重要だということになります。

【参考文献】

〇エベレット・ロジャーズ/三藤利雄『イノベーションの普及』翔泳社
〇クレイトン・クリステンセン他/櫻井祐子『イノベーションのDNA』翔泳社

〇クレイトン・クリステンセン他/櫻井祐子『イノベーションの解』翔泳社
〇スコット・バークン/村上雅章『イノベーションの神話』オライリー・ジャパン
〇武石彰他『イノベーションの理由』有斐閣
〇フランス・ヨハンソン/幾島幸子『メディチインパクト』ランダムハウス講談社
〇ヘールト・ホフステード/岩井紀子・岩井八郎『多文化世界 違いを学び共存への道を探る』有斐閣、1995年  本書において大きく取り上げた「権力格差指標」はこの書籍において詳細に解説されています。
〇マイケル・A・ロベルト/スカイライトコンサルティング『決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント』英治出版
〇「クオリティの高い意思決定はどのようにすれば可能になるのか?」

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