佐々木康裕さんの「D2C 『世界観』と『テクノロジー』で勝つブランド戦略」を読みました。簡単にいうとタイトルが全て。もう少し丁寧にいうなら、新しい消費の価値観を持つミレニアル世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランドの企業と戦略というのが正しいのかもしれない。
D2Cブランドが販売しているものは、プロダクトではなく世界観やライフスタイル。現代の顧客は 単に機能 だけではなく、 感情 を買おうとしているという考え方だ。例えば、顧客の一部をコミュニティ化し、そのコミュニティからのフィードバックを得ながら「製品開発チームの一員」のように扱うのは、D2Cブランドが得意とする開発方法らしい。インターネットやSNSの登場で、表現をするための 枠 は実質的に「無限」になっている。だからこそ、これからのブランドにはある種の「奥行き」や「深み」が求められているわけで、デジタルの可能性を極限まで活用した「コミュニケーションチャネルの多様化」と「世界観の重層性」の2つを兼ね備えていることが、D2Cブランドの大きな特徴となっているらしい。
D2Cブランドがここまで世界観を重視しているのは、主要ターゲットであるミレニアル世代(1981~1997年生まれ)やZ世代(1998~2016年生まれ)が、世界観の訴求に強く共感するという特徴があるからということが原点らしい。この世代は「ブランド」全般を基本的には信頼しておらず、本物であること、社会にとって意味のあることを期待し消費を行う。また、新しい世代は、世界観、パーパス(企業の目的、存在意義)といった内容に反応するということみたいだ。そして、この世代の第2の特徴は、所有物ではなく行動こそが自分を表現していると考えているところにあるらしい。この世代の消費者は、製品そのもののよさ、というよりは「誰が作ったか」「どう作られているか」「どういう大義のもとに作られているか」「どう自分の生活を変えていくか」といった、「意味レベルでの価値」を重要視するようになってきているため、「そのブランドの提案するライフスタイルが自分とフィットしているか」「ストーリーやその語り口は自分のセンスとマッチするか」といったことが重要視されるということだ。D2Cブランドはプロダクトだけではなく、ライフスタイルをも提供する。ものづくり企業であると同時にメディア企業でもあり、そしてテック企業でもあるということらしい。
いずれにせよ、テクノロジーは重要だが、テクノロジーが極めて身近なものになり、多くの人が使えるようになってきたところで、テクノロジーだけでもない「世界観」が求められてきて、それに沿ったスタートアップが新しい勢いとなっているという理解をした。世界観は文化でもあるから、やっぱり教養だったり、リベラルアーツの時代になってきたということなのかもしれない。
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