安宅和人さんの「シン・ニホン」を読みました。サブタイトルは「AI×データ自体における日本の再生と人材育成」。予想通り骨太で読み応えのある本でした。
「AIとデータに得意なことはAIとデータに任せ、浮いた余力をヒトにしか生み出せない価値の打ち出し、ヒトにしかできないこだわりや温かみの実現を目指していくことが、ビジネスの勝負どころになる」という話は当たり前で別段新しい話ではない。AIが仕事を奪う・・・的なことが書いてある本なら、まず必ず言われること。では、人にしかできないこととは何か?これに対して、ある意味「目に見えない特別な価値を生み出せるかどうか、素晴らしい世界を描き、領域を超えたものをつなぎデザインする力」という表現をしている。そのために「人がいいなと思うであろうことを先んじて感じ、それを自分なりに表現できる力が重要となる。言葉でもいいし、絵でもいい。その両方があるとさらに最高だ」といい、そういう力を持った人を育てること、それと自分たち一人ひとりもそういう価値を感じられる能力を磨いておく必要があるということだ。筆者は、「日本の大半の産業はやるべきことをやっていないだけで、まだ着手できていない宿題がたくさんある」ということも指摘している。そして、そうなった理由として日本における専門家層の厚さが足りないことと分析している。
そんな日本に必要なことは3つ。第一に、さまざまなところから多様なビッグデータが取れ、いろいろな用途に使えること。第二に圧倒的なデータ処理力を持っていること。データ処理力とは技術でありコスト競争力を指す。そして、第三にこれらの利活用の仕組みを作り、回す世界トップレベルの情報科学サイエンティスト、そしてデータエンジニアが必要ということだ。現状は、ユーザ保護ではなく既存業態の保護行政のために、幅広くデータの力を解き放つことができない。そして、自然言語処理や機械学習などの研究・実験環境を、堅牢で大規模かつリアルタイムの本番環境につなげられる人材が足りていない。高速データ収集、分散環境、ロギング周りの仕組みを作れて、回せる人が極めて限定的という課題もありやること多すぎ。
ということで、何よりも人材育成が大事。そのためにはすそ野をほろげなくてはいけないということで、米国などの実態を踏まえ提言している。それは具体的で説得力があり。そして正しい。是非やるべきなんだと思うし、国家として是非やってほしいと思った。
しかし、何よりも刺激的だったのは、拡大、成長を前提としないで、少子高齢化のトレンドの中でこれを実現すべきという考え方でした。そもそも温暖化の原因であるCO2の排出量から考えると、明らかに地球規模で人口が増え過ぎている。現在の森林が排出される二酸化炭素を酸素に還元できる量を前提に考えると、森林の多い日本ですら大きく人工超過であるという話。あくまで、縮小のトレンドの中で日本という国がどこを目指し、何をすべきかという観点で述べられているのだけど、過去の地球が戦争や疫病で過剰な人口を調整してきたとするならば、新型コロナ肺炎は正にその役割を担うべく発生したパンデミックなのではないかと考えさせられてしまいました。
とても刺激的。できれば紙の本で買いなおして、何度でも読み返したい。
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