りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

経済物理学への招待

日経新聞の「やさしい経済学」に連載されている京都大学青山秀明教授の「経済物理学への招待」が面白い。昨日は「時系列分布」。統計データの変動確率が当初の規模に関係なく決まる分布の性質はジブラ(Gibrat)則と呼ばれていて、例題では所得成長率が上げられていた。数理的研究では、ジブラ則が成立し、かつその間、経済に劇的な変化がなかったという2つの性質が同時に成立していれば、その間べき分布となっていなければならないという法則があるらしい。つまり、べき分布が成立していないと、経済が劇的に変化したか、ジブラ則が成立していなかったことになるらしい。この性質をつかって、91年の高額個人所得をみると、べき分布とはいえない分布形状で、この年に経済が劇的に変化したことが個人所得の面からも確認できるとしている。
さてさて、昨日の記事で興味をもって本日の連載を見てみると、タイトルは「均衡概念を超えて」とある。こうだ。
「主流派経済学は、労働者の移動で労働生産性が企業間で同じになるという均衡過程を説く。だが、そのベースとなる限界生産性をデータで直接検証することは難しい。実証的には平均生産性を財務データから抽出すると生産性が高いグループでは、べき分布であることが確認されている。数学的には平均生産性がべき分布を示すとき、限界生産性もべき分布になることが証明されいて、主流派経済学が説く、限界生産性が一定である(均衡する)とは考えづらいというもの」。ここで紹介されているのが、青木・吉川理論。物理学の「熱力学的平衡」の概念に基づき、労働者を気体の分子、エネルギーの値を生産性、需要を気体の全エネルギーになぞらえ、労働生産性はある水準に収束するのではなく、ボルツマン分布を描くと考えた。さらに、ここに超統計物理学という最新理論を用いると、ボルツマン分布を重ね合わせた分布を描くとべき分布の形状が現れることが判ってきたらしい。この理論を使って、青山教授らは需要変動指標を考案したというのだ。これは実際の生産性の分布から総需要が変化する様子を抜き出したもので、これによって実際の企業活動をベースに経済全体の動きを捉えることに成功しているという。何だか難しそうですが、とても興味深い話題です。