カンヌ映画祭コンペティション部門選出作品。映画の音声ガイドというあまり馴染みのない仕事をやっている主人公の美佐子。まず、こういう職業があるのかという気づきみたいなところから映画の世界に導かれる。視覚障害を持つモニターさんたちは、時に優しく、時に遠慮がちに、でもかなりはっきりと彼女のガイドを批判する。少し立ち位置の違う男性。弱視のカメラマンでその視力は徐々に失われていく。間違いなく美佐子はカメラマン中森のコメントにイラつきながら、でもなぜか彼に惹き付けられていく。ここが何だかわからないのだけど、多分、永瀬正敏さん演じる中森の作品には単に目に映っているものだけでなく、眼に見えない心で感じる何かが描き出されているのだろう。それが、音声ガイドの仕事で彼女が伝えたい何かに通じるものがあって、そこが彼らを惹き付けた・・・ような気がする。言葉というのは見えるものの一部しか伝えきれない。絵になるものには全体が醸し出す雰囲気だったり、映し出された老人の心だったりが伝わってきたりすることがある。そんな目に見えないものを感じさせる、心にズンとくる作品でした。