りおパパの日記

徒然なるままに。ドトールのコーヒーが好きです。

越境者 松田優作

松田美智子さんの「越境者 松田優作」を読みました。立花隆さんの本を読んで、この本ともう1冊、戸塚洋二さんの「がんと闘った科学者の記録」はどうしても読みたくなりました。

さて、この本、俳優松田優作の生き様を元妻が語る。一言で言えばそうなのだけど、壮絶です。彼は末期の膀胱がんと闘いながら、映画としては遺作となった「ブラックレイン」に出演したわけです。それはそれで凄い話なのだけど、在日として生まれて、屈折した若い時代を過ごし、「太陽にほえろ!」への出演をきっかけに、俳優としての存在感を確立していくわけだけど、表現者として常に上を目指し、常に進歩しようとしていた姿勢こそ、彼の生き様だったのではないかと思います。そしてそういう人にありがちなのだけど、自分の考えを受け入れられない人、共有できない人をとことん排除していく。そこに上下関係があれば、ある意味暴力となってそれが表現される。そういう姿が映像のように浮かび上がる内容でした。
単に医者嫌いだったのかもしれないけど、闘病編は凄いです。どこまで我慢して、どこまで隠しとおして、役者としてその役を演じきるか。「ブラックレイン」の松田優作は確かに凄かった。スクリーン一面に"いっちゃった感"が半端なかった記憶が鮮明に残っています。本文にもあるように、もし優作が生きていたら、渡辺謙さんのようにハリウッドで継続して活躍した俳優になったのかもしれない。いずれにせよ、松田優作の凄さを感じさせる、そんな作品でした。

ちなみに作者の松田美智子さんは、無名時代からの松田優作を影で支え、11年間寄り添った元妻です。読んでいて判るのは、単に無名時代の恋人&妻という関係でなく、その後スターダムにのし上がって、俳優としての地位を確立したあとも、ずっと彼を支えてきた人でした。一般的に松田優作の妻といえば、松田龍平松田翔太の2人の息子をもうけた(実はもう一人娘がいる)熊谷美由紀さんなのかもしれないけど、松田優作に近い人からみると、永い間彼を支えたこの松田美智子さんこそがやっぱり松田優作の元妻なんですね。探偵物語をきっかけに、松田優作は熊谷美由紀と不倫、そして美智子さんとは離婚という道をたどった様だけど、美智子さんとの間にもうけた娘への愛情はあったようで、誕生日には必ず食事をしていたというエピソードが載っていました。もちろん美由紀さんサイドには美由紀サイドの見方があると思うのだけど、俳優松田優作を語る上で、最も重要な人物はやはりこの人なのではないかと思いました。

越境者 松田優作 (新潮文庫)

越境者 松田優作 (新潮文庫)

 

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