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株式会社の終焉

日記 読書

 水野和夫さんの「株式会社の終焉」を読みました。この本、現在の社会経済を歴史的な視座から分析した、しっかり読みこめばすごく読み応えのある面白い本ではあるのだけど、割とさっと読んでしまいました。ポイントは、経済の成長を決めるイノベーション、資本、労働(人口)の3つの要素のいずれもが、すでに成長の限界に来ているということ。そして、それを前提にこれからの会社の在り方を考えたもの・・・というと簡単すぎるかな。ただ、イノベーションを起こすにはコストが掛かりすぎること、子供を持つコストも大きいこと、さらに資本を増やせば不良債権化しかねないことなど、確かに説得力があり、まあその辺はいくらリフレ派がマイナス金利にしたところで、投資にお金が回らない根本原因のような気がするし、自分の肌感覚にもあう意見かなと思いました。成長を前提に経済を考えるといろいろ無理があるので、それを前提にしないということが資本主義、あるいは株式会社の終焉なのだと思います。

●第1章 株高、マイナス利子率は何を意味しているのか
・日本の「資本帝国」化を押し進めたのは、1990年代から世界中で猛威をふるったグローバリゼーションです。外国の労働者との競争を名目に賃下げが行われたのです。
・経常収支が恒常的に黒字である日本やドイツ(供給過剰の国)と、経常収支が恒常的に赤字である英米(需要超過の国)を同じ土俵に上げて、欧米並みにROEを高めろといわれれば、企業は経費の一つである人件費を削減するか、下請け会社に部品などの納入単価を下げさせるしかありません。
・日本の対外純資産は2016年3月末時点で355・3兆円と世界ダントツです。
・円安は輸入物価の上昇を通じて、国民の生活を苦しくさせました。そして、企業は「稼ぐ力」を取り戻すことを優先するため、一人当たり実質賃金の下落傾向には歯止めがかかりません。
・日銀は、量的緩和政策によって国民が手にする円の価値を安くして生活水準を低下させたうえに、マイナス金利政策で本来国債保有者(預金者や保険の契約者)が手にするはずの利息を政府や外国人に渡してしまっています。
・グローバリゼーションは世界を、実物経済優位の時代から金融経済優位の時代へと変えました。
フリードマンが考えた新貨幣数量説が成り立つ世界は、21世紀にはもはやどこにも存在しないのです。
フリードマンは、もともと、それまで信奉されていたケインズの裁量的総需要管理政策に反対し、貨幣供給量をその時々の景気の好不況といった経済情勢に合わせて人為的に変化させると、短期的には大きな経済変動の要因になってしまうと考えました。政府の経済政策に携わるエリートたちを信頼していなかったともいえます。
・マネタリーベースを増やしても物価が上がらないのは、「地理的・物的空間」が膨張できなくなったからです。
・結局、国債の利回りは企業活動のコストと企業の利潤率に連動して決まります。
・潜在成長率の低下は、均衡実質金利ないしは自然利子率が低下することを意味します
・日本とドイツが世界で最も「資本係数」が高い国だからです。資本係数とは民間資本ストックを実質GDPで割った比率です。
・資本係数の増加率がプラスだということは、実質GDPより資本ストックの増加率が高いことを意味します。
・新規設備投資は今、既存の設備を不良債権化してしまう段階にきているのです。
・世界的に資本が「過剰」なまでに積み上がるというのは、資本主義のもつ宿命であり、なるべくしてなったともいえます。
●第2勝 株式会社とは何か
・「特許会社は、特許状に加えて、中世から引き継いだ二つの概念に基づいて」いました。一つは「自由市場で売買可能な株式という概念」。もう一つは「有限責任という概念」です。
東インド会社(1600年設立)は、永続資本だったという点も大きな変化でした。
有限責任の重要性は、無限責任で事業を行う場合の罰則の重さからうかがえます。
・この小論文のなかでコペルニクスは7つの公理を公表しました。第1に「天体は、同じ一つの中心を共有しているわけではない」。第2に「地球の中心は宇宙の中心ではない」。第3に「宇宙の中心は太陽の近くにある」。第2と第3がいわゆる地動説です。
・第4の公理である「地球から太陽までの距離は、地球から恒星までの距離とくらべれば取るに足りないほど小さい」というものでした。
コペルニクス革命は地上の秩序の再構築を迫りました。地球は金星や火星と同じ太陽(恒星)のまわりをまわる惑星の一つにすぎないというかれの宇宙論は、「キリスト教社会で認められていた世界の階層的秩序の解体につなが」っていきました。神と人間の間の安定した関係を断ち切り、人間に精神的独立を要求したのです。
・イギリスの豊かさは自国と「新大陸」の間の不等価交換の上に成り立っていたのです。
・正確にはコペルニクスは「広大無限」を想定したのであって、のちに宇宙が無限であることを証明したのはニュートンです。
・イギリスは世界に先駆けて王国の借金ではなく、国民の借金、すなわち「国債」を発明した。このことが、国民国家のイギリスが絶対君主制のフランスとの覇権争いに勝利できた大きな要因だったといえます。
・南海会社をはるかに凌ぐのが、21世紀の日銀です。日銀の資本金はごくわずかですが、資産サイドからみると、日本国債を386兆円保有しています
・利子と利潤、あるいは出資と融資という概念です。パートナーシップ型においては、利子の中にリスク回避のための利潤も含まれていました。しかし、株式会社型資本主義になると、出資と融資は厳密に区別されるようになりました。
・出資と融資は区別しないと、リスクをとる投資家と、元本確実を優先したい投資家のニーズに対応できないというわけです。
・日銀が2013年以降、黒田総裁のもとで実施している異次元金融緩和とマイナス金利政策が一向に日銀の目的を達成できないのは、過去との対話がないからです。
・株式会社の有限責任が機能するには、所有と経営の相互牽制がきいていることが必要ですが、それができていない。
●第3章 21世紀に株式会社の未来はあるのか
・「無限」空間を前提にした近代が「有限」空間に直面すると、成長(近代)それ自体が収縮(反近代)を生むようになります。
・「ショック・ドクトリン」によって、バブル生成でも崩壊でも、どちらの局面でも利益が出るようになったのです。
・18世紀の初めからイノベーション件数は増加トレンドに入り、1950年代までは高原状態だったのですが、「一九五五年前後からさらに大きく落ち込みはじめる。イノベーション減速の時代が幕を開け」ました。
イノベーションを実現するために多くの資金を投じなくてはならなくなり、投資回収率が悪化している
・ヒューブナーはイノベーションの件数が減少している理由として、イノベーションの実現にコストがかかりすぎ、投資回収率が悪化していることを挙げていますが、これは現代の人口減の本質的原因と共通します。
・デフレの原因を人口減に求める説がありますが、人口減少もデフレも近代がみずから生み出した産物です。
・近代社会をさらに一歩前に進めるためのコストがかかりすぎることが水面下の原因(X)なのであって、その結果として、目に見える水面上の現象、人口減少(Y)とデフレ(Z)が現れているのです。
三菱東京UFJ銀行が「仮に国債金利変動リスクを自己資本に反映させたらどうなるか」というシミュレーションをしたところ、「どのモデルを使って計算しても、国債金利が一律2%上がると自己資本比率は5%程度下がる」という衝撃的な結果が出ました。
・「債務国家」のとるべき戦略は「成長戦略」ではありません。わたしたち国民自身が、国家に対してあれもこれもと要求する(国の借金を増やす)のではなく、国家に対する「出資者」として、年間の財政赤字を解消し国債の借り換えにショートしないようにする国債のマネジメント戦略と、国家に対してどういうサービスを要求するかを考え直すことが必要です。
・預金者がいくら預金を各金融機関に1000万円ずつ分散させても、その預け先である国内金融機関がどこも国債に投資しているのであれば、それは預金者が国債のリスクを背負っているのと同じことなのです。
・今の日本では、高いリスクを負う預金者と、相対的に低いリスクしか負わない株主という構図になっています。
・資本コストは5%といわれているため、ROE8%から5%を引いた3%がリスクを負わない人が受け取るリターンとなるからです。
・ありうる姿は、株主のリターンを低くすることだと考えます。
西ローマ帝国が滅んだ直後から中世が終わるまでの間(500年~1500年)、世界の一人当たりの実質GDP成長率は、わずか年0・03%でした(500年間で1・35倍)。
・今後は中世のような定常経済とたいして変わらない状況になると予想されます。
・潜在成長率は自然利子率と等しいので、ゼロ成長はゼロ金利になります。
・この超低金利は、イタリアの上流階級にとって、もうこれ以上、投資機会がないということを反映したものでした。
・帝国の時代であれ、国民国家の時代であれ、世界は「中心」と「周辺」で成り立っています。そして現在、サハラ砂漠以南の地域が最後の「周辺」と化しているのです。
・AA型株式は、中世イタリアの有限責任型パートナーシップ、コメンダの性格に近づいているといえます。
・目に見えない人たちから巨額の資本を調達するのに最も優れているのが、有限責任の株式ということです。
トヨタのAA型は事実上、元本保証がある点で、限りなく債券に近い性格を有しています。現在の株式会社以前の形態に戻り、債券と株式の境界を曖昧にする
・世界史は「陸と海のたたかい」であると定義したのはドイツの法学者であり政治学者でもあるカール・シュミットです。市場を通じて富(資本)を「蒐集」するのが「海の国」であるのに対して、「陸の国」は領土拡大を通じて富を「蒐集」します。どちらも「蒐集」の目的は社会秩序維持のためです。
・「海の国」である英米がグローバリゼーションを推進することによって地球は一つになったかにみえたまさにその瞬間、「陸の時代」へと逆向きの力が作動しはじめたというわけです。
・「投機」(スペキュレイション)というです。
・20世紀末になると、地球が「有限」になったことが明らかになり、成長は終わりました。
・潜在成長率を決めるのは技術進歩、資本量、労働量の3つの要素ですが、これらはいずれも、すでに成長に貢献していません。
・技術進歩が成長に寄与しなくなったのは、売上増以上に研究開発費などのコストがかかるようになってきたからです。
・労働量、すなわち人口が減少するのは、家計の収入増以上に教育費がかかるようになったからです。 残るは資本量ですが、資本係数が世界一の日本で、これ以上工場を建てたり、M&Aを仕掛けたりして資本を増やせば、将来不良債権になります。
・過剰な資本蓄積は企業の内部留保金として表れています。内部留保金は、企業のバランスシートの資本の部にある利益準備金、積立金、そして繰越剰余金の3つから構成されています。
・地球はいずれ「閉じる」ので、グローバル企業の販売先も、そのうち「閉じる」ことが確実です。ですから、放っておいても、次第にグローバル企業がリージョナル企業に収斂していくはずです。
・16世紀は、寛容主義者エラスムス(1466‐1536)の時代といわれていました。
・現在の「より寛容に」とは、応分の税を企業も個人も負担することなのです。
・貨幣は仕事の等価代償ではなくなっています。
●あとがき
・近代は「進歩」と「合理性」ですべてを解決できるシステムでした。
・いまや、あらゆるモノ、そして資本が「過剰・飽満・過多」となったため、「供給みずから不良債権をつくる」ようになったのです。

株式会社の終焉

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