読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

イシューからはじめよ -知的生産の「シンプルな本質」

 安宅和人さんの「イシューからはじめよ -知的生産の『シンプルな本質』」を読みました。とても示唆に富む本でした。構成は以下の通り。

はじめに 優れた知的生産に共通すること
■序章 この本の考え方―脱「犬の道」
■第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
■第2章 仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
■第3章 仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする
■第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
■第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう

「イシュー」まず、問題は何かをきちんと確認する。問題を解くための道筋を明らかにする。そしてそれを分析しメッセージとして伝える。コンサルタントの基本だと思いますが、意外にこれができていない。筆者が脳科学者という経歴をもつこともあるので、脳の理解の仕組みといったところから解き明かしてくれて、非常に腹落ちするものでした。ただ、こういうのも訓練かなと。理解するには実際にやってみるしかないのだろうなと思いました。ただ、こうした考え方が浸透している組織は、とてもシステマティックで知的生産性が高いのであろうと・・・そんな風に感じました。生産性を高めるといったとき、単にツールが云々ではなく、こうしたところからアプローチできるとレベルが一層上がるような気がしました。

・「何に答えを出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギなのだ。
・君たちの賢い頭で10分以上真剣に考えて埒が明かないのであれば、そのことについて考えることは一度止めたほうがいい。それはもう悩んでしまっている可能性が高い
・バリューのある仕事をしようと思えば、取り組むテーマは「イシュー度」と「解の質」が両方高くなければならない。
・世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。
・本当に右上の領域に近づこうとするなら、採るべきアプローチは極めて明快だ。まずはヨコ軸の「イシュー度」を上げ、そののちにタテ軸の「解の質」を上げていく。
・よい仕事をし、周囲からよいフィードバックを得ることで、はじめて人は「解の質」を学ぶことができる。
・プロフェッショナルとしての働き方は、「労働時間が長いほど金をもらえる」というレイバラー、あるいはサラリーマン的な思想とは対極にある。働いた時間ではなく、「どこまで変化を起こせるか」によって対価をもらい、評価される。あるいは「どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるか」によって存在意義が決まる。
・問題に立ち向かう際には、それぞれの情報について、複合的な意味合いを考え抜く必要がある。それらをしっかりつかむためには、他人からの話だけではなく、自ら現場に出向くなりして一次情報をつかむ必要がある。そして、さらに難しいのは、そうしてつかんだ情報を「自分なりに感じる」ことなのだ
・「一次情報を死守せよ」というのは、私の大先輩が授けてくれた珠玉の教えのひとつだ。
・脳は脳自身が「意味がある」と思うことしか認知できない。そしてその「意味がある」と思うかどうかは、「そのようなことが意味をもつ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まる。
・ある商品の戦略づくりをするときであれば、市場や競合の情報だけでなく、モノづくりの行程・資材の調達・物流・販売などについても具体的にイメージし、さらには変化を起こしたときの影響までを推定する力がなければ正しい判断はできない。
・問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。
・「これは何に答えを出すためのものなのか」というイシューを明確にしてから問題に取り組まなければあとから必ず混乱が発生し、目的意識がブレて多くのムダが発生する。
・イシューを見極めるためには「実際にインパクトがあるか」「説得力あるかたちで検証できるか」「想定する受け手にそれを伝えられるか」という判断が必要となり、ここにはある程度の経験と「見立てる力」が必要になる。
・答えを出すべきイシューを仮説を含めて明確にすることで、ムダな作業が大きく減る。つまり生産性が上がるのだ。
・イシューと仮説は紙や電子ファイルに言葉として表現することを徹底する。
・人間は言葉にしない限り概念をまとめることができない。「絵」や「図」はイメージをつかむためには有用だが、概念をきっちりと定義するのは言葉にしかできない技だ。
・「WHY=~はなぜか?」という表現には仮説がなく、何について白黒をはっきりさせようとしているのかが明確になっていない。「答えを出す」という視点で課題を整理すると、「WHERE」「WHAT」「HOW」のかたちになることが多いことは理解してもらえるだろう。
・選択肢があり、どちらになるのかによってそこから先の研究に大きな影響が出るものがよいイシューなのだ。
・一見イシューのように見えても、その局面で答えを出す必要のないもの、答えを出すべきでないものは多い。
・「これがイシューだ」と思ったら、そのイシューの主語を確認してみよう。「誰にとって」という主語を変えても成り立つものは、まだイシューとしての見極めが甘い可能性が高い。
・プロジェクトがはじまった時点でエキスパートや現場の人に話を聞くことで、その分野で共通に信じられているもの、いわゆる「常識」を知ることができる。本などで学ぶことより、こうした「肌感覚の常識」が反証されたときのほうがインパクトは大きい。
・一般的に信じられている信念や前提を突き崩せないかを常に考えるようにしたい。
・「人が何かを理解する」というのは、「2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する」ことだと言い換えられる。
・どれほどカギとなる問いであっても、「答えを出せないもの」はよいイシューとは言えないのだ。「答えを出せる範囲でもっともインパクトのある問い」こそが意味のあるイシューとなる。
・イシュー見極めにおける理想は、若き日の利根川のように、誰もが「答えを出すべきだ」と感じていても「手がつけようがない」と思っている問題に対し、「自分の手法ならば答えを出せる」と感じる「死角的なイシュー」を発見することだ。
・イシューを明確化し、肝となる検証をスピーディに進め、仮説を刷新してこそ、真に生産性の高い毎日が実現する。
・情報収集の効率は必ずどこかで頭打ちになり、情報があり過ぎると知恵が出なくなるものだ。
・その分野について何もかも知っている人は、新しい知恵を生み出すことが極めて難しくなる。
・イシューを分解するときには「ダブりもモレもなく」砕くこと、そして「本質的に意味のある固まりで」砕くことが大切だ。
・入口にあたる「切り分け方」を誤ると、その分析自体が行き止まりになってしまう可能性が高いのだ。
・「比較」が言葉に信頼を与え、「比較」が論理を成り立たせ、「比較」がイシューに答えを出す。優れた分析は、タテ軸、ヨコ軸の広がり、すなわち「比較」の軸が明確だ。
・比較というものは3つの種類しかない。 1 比較  2 構成  3 変化
・既存の手法を活用すること、使える手法の意味と限界について正しく理解しておくことが役に立つ。自分の関連する分野でカギとなる手法は一通り知っておいたほうがよい。
・脳神経系の基本単位である単一のニューロンでは、ある一定レベルの入力がないと情報を長距離にわたって伝達する活動電位というものが発生しない。これを「全か無の法則」という
・脳は「なだらかな違い」を認識することができず、何らかの「異質、あるいは不連続な差分」だけを認識する。
・脳は「異質な差分」を強調して情報処理するように進化してきており、これは脳における知覚を考える際の根源的な原理のひとつだ
・明確な対比で差分を明確にすればするほど脳の認知の度合いは高まる。
・分析イメージを設計する際には、同じような分析の型が続かないようにすることが重要だ。 同じかたちのグラフやチャートが続くと、2枚目以降に関しては認知する能力が格段に落ちる。
・脳神経系では「2つ以上の意味が重なりつながったとき」と「理解したとき」は本質的に区別できないのだ。
・「理解するとは情報をつなぐこと」 。既知の情報とつなぎようのない情報を提供しても、相手は理解のしようがないのだ。
・同じ基準から異なるものを見ることによって、情報と情報の「つなぎ」が発生しやすくなり、理解が進む。優れた軸は複数の異なる情報をつなぐ力が強いのだ。
・「つなぎを何度も使うとつながりが強くなる」ことが知られている。「ヘッブ則」
・何度も情報のつながりを想起せざるを得ない「なるほど!」という場面を繰り返し経験していると、その情報を忘れなくなる。
・「理解の経験」を繰り返させなければ、相手の頭には残らない。外国語を学ぶとき、単語帳だけ見ていても覚えられないが、さまざまな場面である単語が同じ意味で使われていることを認知するとその単語を覚えられる、
・ストーリーラインと絵コンテに沿って並ぶサブイシューのなかには、必ず最終的な結論や話の骨格に大きな影響力をもつ部分がある。そこから手をつけ、粗くてもよいから、本当にそれが検証できるのかについての答えを出してしまうわけだ。重要な部分をはじめに検証しておかないと、描いていたストーリーが根底から崩れた場合に手がつけられなくなる。
・シンデレラの物語は「シンデレラが継母の娘たちより圧倒的に魅力的である」という前提が話を成り立たせている。
・本当のイシューを明確に認識した実験(分析・検証)がどれほど貴重なものか、そしてそれを意識した進め方をすることがどれほど大切かということがわかる。
・期限を切って、そこを目安にして解決のめどがつかなければさっさとその手法に見切りをつける
ミンスキーの話からわかるのは、「もっている手札の数」「自分の技となっている手法の豊かさ」がバリューを生み出す人としての資質に直接的に関わる、ということだ。
・停滞を引き起こす要因として、最初に挙げられるのが「丁寧にやり過ぎる」ことだ。単に丁寧にやっていると、スピードだけでなく完成度まで落ちてしまうのだ。「受け手にとっての十分なレベル」を自分のなかで理解し、「やり過ぎない」ように意識することが大切だ。
・エレガントなアプローチを取ったとしても、それが正しくイシューに答えを出せなければ何のインパクトも生み出さない。
・もうひとつ「スピード」というものがここでは決定的に重要になってくる。
・受け手が語り手と同じように問題意識をもち、同じように納得し、同じように興奮してくれているのが理想だ。1 意味のある課題を扱っていることを理解してもらう  2 最終的なメッセージを理解してもらう  3 メッセージに納得して、行動に移してもらう
・いくつものフレームワークを頭に置いて話を聞いたり論文を読み続けたりすることは、受け手の理解度を落とすからだ。
・エレベータテストでわかるのは、ピラミッド構造でストーリーをまとめることの利点だ。
・優れたチャートは明確なイシュー、サブイシューを取り上げているだけでなく、その答えを出すために明確な比較ができている。
・「場面(オケージョン)=利便(ベネフィット)」の視点での市場の切り分けの応用だ
・プロフェッショナルの世界では「努力」は一切評価されない。確かに手の込んだ仕事をすれば多少の感銘はしてもらえるかもしれないが、それもあくまできっちりとした結果が生み出されてのことだ。

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

 

 [DATA]

今月の読書 11冊

1月からの読書 99冊