あれか、これか

野口真人さんの「あれか、これか」を読みました。ファイナンス理論の入門書ですが、とてもよかったです。どれもこれも自分では知っている話のはずなのですが、妙にすっきりと腹に落ちる。こうやって、説明すると理解が進むのかとそんなことを感じさせてくれる本でした。確かに、DCFも現代ポートフォリオ理論も、オプションも非常にわかりやすく解説されていたように思います。ハイライトは以下。 

ファイナンスは一貫して「金銭にしたらいくらになるか?」という金銭的価値を尺度にモノを考える学問だということだ。
・モノの価値はコストの積み上げだけでは、説明がつかないのである。
・すでに存在しているほかのモノの市場価格によって、そのモノの価値が決まる」という考え方は、マーケット・アプローチ(取引事例比較法)などと呼ばれる。
ファイナンスはコスト・アプローチとまったく逆の考え方をする。つまり、「銀座の地価が高いから、コーヒーが高い」ではなく、「銀座ではコーヒーが高いから、地価が高くなる」というように、因果関係が真逆なのだ。
・ブランド力が銀座に人を集め、高い買い物をさせる原動力となっているのである。
・企業の無形資産として一般に考えられるのは、ブランド力とか顧客基盤、独自のノウハウ・特許などだ。
・株式時価総額と株式資本の比率は、PBR(株価純資産倍率: Price Book-value Ratio)と呼ばれている。
キャッシュフロー・アプローチとは、「モノの価値はそれが生み出すお金の量によって決まる」という考え方である。
ファイナンスは現金を最も価値の低い資産に分類する。なぜなら、現金それ自体は、1円もキャッシュフローをもたらさないからだ。ファイナンスにおける価値はどこまでも「キャッシュフローを生む力があるかどうか」だ
ファイナンス的な意味でのお金持ちというのは、キャッシュフローを生む資産を多く持っている人である。したがって、世の中のイメージでは「いかにもお金持ちの所有物」というイメージがあるもの、たとえば「金」「美術品」「避暑地の別荘」なども、ファイナンス的価値が低いものばかりだ
・会計におけるバランスシートは「現金に変えやすい順で上から記載していく」というルールがある。
・市場があることで、会社の価値がコスト・アプローチではなく、キャッシュフロー・アプローチで測定される世界に入れるのである。
・株式上場とは、将来の利益を現在に連れてくるためのタイムマシンなのである。
ファイナンス理論のリスク概念は「予想された事象の変動に関する不確実性」を指す。もう少しわかりやすく言えば、「どっちに転ぶか」のわからなさ度合いこそがリスクなのである。
・人生の選択は、この「望ましいリスク」をどれだけ味方につけられるかにかかっていると言っても過言ではない。
・銀行員になるには仕事の能力以外に、組織人としての理不尽さに耐える資質も必要だったのだ。
・これを選ぶことで、将来にどれだけの価値が生まれるのか? そして、考えられるリスクで割り引いてみたとき、将来的に手にし得るリターンの現在価値はどれくらいなのか? そんなことを考えながら人生の「あれか、これか」に向き合ってみてほしい。
・不確実性としてのリスクは、過去のデータのばらつきとして表現することができる。
・これを年率で表したものをボラティリティ(変動率)という。
・リスクは「時間の平方根」に比例する
・株式による資金調達のほうが、負債よりもはるかに高いリターンを要求される(高コストな資金調達である)ことを、経営者は何よりも肝に銘じなければならない。
モディリアーニとミラーは「企業価値は資産そのものの価値で決まる」と主張した。従来はバランスシートの右側(負債と資本)で企業価値を見ていたのに対し、MM理論は左側(資産)こそが価値のメインステージだということを証明してみせたのである。
・第1命題??企業の市場価値はその資本構成から独立であり、そのクラスに見合った利益率ρkによってその期待利益を資本化することにより与えられる。
・大切なのは、調達した資金がどんな資産に姿を変えているのか、そしてその資産がどれほどのキャッシュフローを生むのかということなのである。
・MM理論の第2命題??営業利益が相等しい場合には、他人資本を利用する企業の株式収益率の期待値は、資金のすべてを自己資本で調達している企業の株式収益率の期待値に、借入のために付加されるリスクを加えたものに等しい。
・自分の持ち金を小さく分散させてなるべく多くのゲームに賭けたほうが、期待リターンは25%の状態をキープしつつ、リスクを極限まで減らすことができる。
分散投資によるリスク軽減効果が成立するためには、決定的な前提がある。それは、それぞれの資産の値動きがお互いに独立している(影響を及ぼし合わない)ことだ
・お互いに反対の動きをする負の相関を持つ銘柄を組み合わせることで、リスクの軽減効果を高めることができるのだ。
・正反対の動きをする銘柄を組み合わせることで、リターンはキープしつつ、両者のリスクをうまく相殺することができる。株式X・Yのようにまったく動きが逆になる銘柄はなかなか見つからないが、まったく同じ動きをするもの同士でない限り、必ず相関効果によるリスク低減は見込める。
・効率的フロンティアに関して言えることは2つある。1つは効率的フロンティアよりも上部の領域に位置する投資はあり得ないということ。
・もう1つは、この境界線よりも下の領域に位置するポートフォリオへの投資は、合理的とは言えないということだ。
・合理的な投資家が保有するのは、効率的フロンティア上のポートフォリオだということになる。
・無リスク資産をポートフォリオに入れても相関効果はゼロであり、リスクの低減には何ら寄与しないということになる。
ポートフォリオの王者」のことをマーコウィッツは、マーケット・ポートフォリオ(MP: Market Portfolio)と名づけた。株式市場のマーケット・ポートフォリオは、市場に存在する株式をその時価総額の比率で案分して組み込んだものだ。
・ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman: 1934?)のプロスペクト理論は、人間のリスク回避度合いは状況によって変化するということを明らかにしてみせた。
・人は一度借金をしたり、損をしたりすると、さらなる損失に対する感応度が鈍くなり、高いリスクをとるようになってしまうわけだ。
・ギャンブルというのは、やればやるほど分散効果が仇となり確実に損をする構造になっているのだ。
・個別株式のβは単にボラティリティの大きさで決まるわけではなく、個別株式とマーケット・ポートフォリオ(MP)の「相関係数」も加味されているという点だ。
・シャープは、すべての個別株式にはそれぞれ決まったβが背番号のようにつけられており、そのβの大きさによって個別株式のリターンが決まると考えたわけだ。
・個別株式のリターンは、その株式自体のリスクからではなく、マーケット・ポートフォリオに与える影響とセットで判断すべきなのである。
・オプションとは後悔しないための取引なのだ。
・オプションの価値を決めるのは、将来の株価予想ではない。むしろ、将来の予想がつきにくい銘柄ほど、オプションの価値は高くなる。そう、オプションの価値を決めるのは、リスクの大きさ、すなわちボラティリティなのである。
・オプション購入と空売りを組み合わせると、1年後にはまったくリスクのないキャッシュフロー25円が確定するからだ。
・リスク中立によって実現される、驚くべきもう1つの帰結は、得られる利益は期待リターンとまったく関係がないということである。
・稼ぐ力を持っている限りは、やはり自分自身が価値を生む源泉になるのがいちばんです。

あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門

あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門

 

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